卒業式式辞H26.3.3

 南向きの校舎は春の淡雪にピンク色を滲ませ、ふきのとうが、はだれの下の枯れ草を押しのけて丸い顔をのぞかせると今年も春がすぐそこまでやってきたことを感じます。ひな人形たちの静かな横顔に、早春の香り漂う本日、桃の節句の佳き日、仙北市長 門脇光浩様、駒草同窓会長 草g良子様、PTA会長 福島正人様はじめ多数の御来賓の御臨席を賜り、また多くの保護者の皆様の御列席の下、平成二十五年度秋田県立角館南高等学校卒業証書授与式を挙行できますことは、教職員、生徒一同この上ない喜びであります。
 ただいま卒業証書を授与いたしました九十九名の皆さん、卒業おめでとうございます。今皆さんは眼前に伸びゆく一筋の道の前に立ち、はち切れんばかりの喜びに胸躍る自分と、いつまでも仲間と一緒にいたいと願う自分との間で、躊躇い、戸惑っているのかもしれません。しかし、旅立ちとはいつもそうなのです。第一歩はより大きな力で踏み出さなければなりません。どうか本校で学んだ三年間を誇りに、胸を張って堂々とそれぞれの一歩を踏み出してください。皆さんの門出を心から祝福いたします。
 保護者の皆様におかれましては、我が子の晴れ姿に、お喜びもまたひとしおのことと御拝察申し上げます。お子様の成長を見守ってこられました十八年の日々が、懐かしい思い出となって、皆様の胸に去来していることと存じます。これまで注いでこられました愛情と御労苦に心より敬意を表しますとともに、今日の佳き日を衷心よりお祝い申し上げます。

さて卒業生の皆さん。角館南高校で過ごした三年間は皆さんにとってどのようなものだったでしょうか。
 三年前、皆さんの中学卒業と時を同じくしてあの大震災は起こりました。皆さんは本校に入学したその最初から、被災した高田高校支援の輪に加わり、一人ひとりがあの災禍を自分のこととして受け止める術を手にしました。そして「行動すること」の意義をそれぞれの柔軟な心で感じ取ってくれたものと思います。三年目の今年度も、5月の募金活動と6月の角南祭で集まった義援金を携え、直接高田高校にお届けして参りました。第二回春高バレー決勝戦にまで遡る両校の絆は今、後輩たちにしっかり受け継がれ、さらなる発展の道を歩もうとしています。
 今年度、統合を控えた最後の一年は、本校創立八十五周年の忘れがたい節目の年となりました。記念講演会で、坂東眞理子氏は「諦めない強さ」を語り、荒木田裕子氏は「多くの敗北や苦難の先にある成功」に触れました。それは、卒業する皆さんへの熱いメッセージであり、これまで一万三千六百有余名の優秀な人材を世に送り出してきた本校へのエールのようでもありました。
 八十五年の歴史を振り返るとき、当時の理念が世代を繋いで現在にまで生きているという事実は私達の大きな誇りです。「郷土教育の重視」は、地域との関わりの中で皆さんが取り組んできた地域学習に生かされ、「知育徳育の二育に偏しない三育の重視」は皆さんの活躍が光った部活動の振興に生きております。さらに、生徒と教師が、ともにモッコを担ぎ、石運びに汗して運動場を作り上げた本校創設時の師弟の姿は、教える者と教えられる者の立場を越え、共に励む師弟同行の精神として卒業生の皆さんの心にも私達教職員の心にも深く刻み込まれています。
 これほどまでに創立時の想いが今に生きる学校を私は他に知りません。それは、皆さんも、皆さんの先輩たちも、同じ学舎で過ごした三年間に自分の成長を重ね、たくさんの思い出と感謝を胸に母校を振り返ることができるからであり、八十五年前の最初から、教師と生徒が共に同じ方向を目指して、第一歩を大きく踏み出したからに他なりません。
 卒業生九十九名のみなさんとの面談で、私は皆さんについて多くのことを知りました。母を助けたいと言い切った人、祖父母への恩返しを誓う人、家族を支えて家事を切り盛りする人、小学校からの学校嫌いを克服した人、進路や部活動の達成感だけでなく、苦労や悩みも率直に語ってくれた人、生徒会活動を通して自信をつけた人、周囲の明るさが自分の不安をかき消してくれたと感謝を口にした人、統合高への期待を「一人ひとりが活躍する場所のある学校」という言葉に込めた人・・・・。
 それぞれの現実を前にしながら、「角南のよさは?」との問いに、皆さんは口々に「みんな明るく元気な学校」と答えてくれました。不安も悩みも励ましも、それらすべてを受け止めて、なお明るく元気に前へ進もうとする皆さんは、「駒草精神」に謳われる「清く賢く強く」生きる少女子の姿そのものでした。
 めまぐるしく変化し、多くの情報が氾濫する現代社会は、みなさんにむしろ考えないことを求め、次々と上辺だけの判断や行動を迫ってくるかもしれません。便利であることが自分の心の肥やしにはならないのと同様、取り敢えず耳に心地よい答えや結論もみなさんの成長の糧とはなり得ません。今の社会にこそ、時代を貫いてなお「変わらずそこにあるもの」に耳を傾け、目をこらす姿勢が求められているものと思います。「変わらずそこにあるもの」を見極めるためには、まず自分自身が拠って立つ「変わらざるもの」へのこだわりを持たなければなりません。それは皆さん自身の強みともなります。この三年間で皆さんが手にしたものは何だったでしょうか。目には見えないけれど確かに皆さんを支え続けてくれたものへの感謝の念だったでしょうか。誰かのためになりたいという想いを行動に繋げるための、自分と相手との距離を縮め、溝を跳び越える勇気だったでしょうか。男子に頼ることなく、何事も自分たちだけで成し遂げてきた気概と誇りだったでしょうか。
 高山植物の女王「駒草」は何万年という気の遠くなる時間をかけて、他の植物を寄せ付けない寒冷な砂礫の高山を住処に、命を紡いできました。他人が及ばない皆さんだけの住処をみつけ、そこに皆さん自身の可憐な花を咲かせてください。人生がその高みを目指す旅路であれば、価値のない一歩などありません。足元だけを見詰めるのではなく、遠くを見据え、新たな第一歩を意気揚々と踏み出してください。迷う時、躊躇う時、振り返えれば、三年間の思い出が籠もった母校がみなさんに勇気を与えてくれるものと信じます。
 結びに、アメリカの詩人Walt Whitmanの 詩"Song of the Open Road"の一節を贈ります。

    The long brown path before me leading wherever I choose.
    Henceforth I ask not good-fortune, I myself am good-fortune,

  私の前に横たわる遠く続く希望の道よ 私はもう幸運など求めない 自分こそ幸運そのものだから(私訳)
 卒業生の前途洋々たらんことを願いますとともに、同窓会、PTA、地域の方々より頂戴いたしました御支援と御協力に心から感謝申し上げます。統合後も変わらぬ御支援を賜りますようお願い申し上げます。
 卒業生の皆さんと御家族の皆様の御健勝と末永い御多幸を祈念申し上げまして、式辞といたします。
  
平成二十六年三月三日
  秋田県立角館南高等学校長 青柳 徹


H26.3.2

 ただいま各賞を受賞いたしましたみなさん、おめでとうございます。いずれの賞も、みなさんが3年間積み上げた努力の成果として獲得したものであり、大変価値のある賞です。同じ挑戦や同じ努力を何度も何度も繰り返し続けるということは容易なことではありません。また、一つ一つの挑戦や努力に目を向けるとき、うまくいかなかったり、投げ出したくなったりということもあったことと思います。そのとき、そこで挑戦や努力を諦めず続けたことへの表彰でもあります。
 優等賞のみなさん。苦手科目をつくらず、あるいは克服し、三年間成績を高いレベルで維持し続けたことは大変立派ですし、皆さんの勉学への真摯な姿勢は、今後もみなさんの大きな武器となります。角館高校の三年生だった大昔の自分のことを思い出しました。三年生の一番最後の試験で、もういいかなと勉強の手を抜き成績を大きく落としたという苦い思い出があります。最後までしっかり頑張り抜いたことは、みなさんの自信に繋がっていることと思います。
 皆勤の十一名のみなさん。この賞は一時間の欠課や一回の遅刻があっても、決して手にすることの出来ない賞です。あとから補うことができないという点では、受賞が非常に困難な賞と言えるかもしれません。健康はもちろんですが、みなさんの強い精神力と意欲は後輩の手本となったことと思います。
 生徒会功労賞の四名のみなさん。本校の生徒会は大変精力的な活動を続けてくれました。昨年十二月の角高との交流会もお陰で大変有意義な会となりました。みなさんが築いた活発な生徒会は後輩たちに引き継がれ、統合高校においても、生徒の牽引役として活動の中心を担ってくれるものと確信しています。
 体育部及び文化部特別功労賞の二十四名のみなさん。勉学との両立の上に立った部活動の振興は、本校創設当初からの教育理念の一つであり、本校の特色の一つでもあります。皆さんはその伝統を受け継ぎ、さらにそのバトンをしっかり後輩に手渡してくれたものと思います。
そして伝達賞の十八名のみなさん。それぞれの専門分野における努力や校内外における個別の活動は、一般の生徒の目に触れることの少ない取組でもあったかもしれません。それだけに、伝達賞という形でみなさんの三年間を全校に周知し、その成果を讃えることの意味は大きいものと考えます。後輩の皆さんの学校生活の視野を広げ、励みとなることを期待しています。
 ソチオリンピック後に、浅田真央選手が語った言葉が大変印象に残りました。「バンクーバーオリンピックにも悔いを残し、ソチ五輪でも悔いが残った。でも、二つのオリンピックを併せると、自分のやりたかったことができたと思う。」彼女は笑顔でそう語っていました。オリンピックという大舞台に限らず、私達は一度きりの結果に目を奪われ、その狭い範囲内で成功や失敗を論じてしまい勝ちですが、努力も成果も何かの区切りごとにリセットされるものではなく、次にキャリーオーバーできるもののはずです。四年ごとのスパンでは目標を達成できなくとも、自分の努力の成果を八年の歳月を一括りとして見つめ直してみたら、満足できたという浅田真央選手のように、何回かの成果を拾い集めてみたら目標が達成できていたという生き方からも、学ぶべきものは少なくないと思います。
 本校での三年間というスパンで、高いハードルを越え、皆さんが各賞を受賞したことに心からの拍手を送り、その成果を讃えるとともに、受賞した三年生も、そうでなかった三年生も、さらに後輩の一、二年生においても、挑戦や努力を三年間という枠を越えて、次のステージへと繋げていく姿勢を忘れず、日々の生活を送ることを期待しております。そして、みなさんの挑戦や努力を陰で支えてくれている何か(先生や仲間や家族かもしれませんし、皆さんが大切にしている言葉かもしれません・・・)、その何かに対する感謝の気持ちを決して忘れないことを願い、表彰式のあいさつとします。


3学期始業式あいさつ H26 1.14

 明けましておめでとうございます。今年は午年ということで、飛躍の年とも言われています。皆さんにとっても飛躍の一年になるよう期待しています。
 さて、この冬休みはどのように過ごしたでしょうか。各部の大会や練習、遠征、ボランティア活動、補習といったさまざまな活動の他、充実した家庭生活も送ることができたでしょうか。
 3学期の始業式にあたり、私からはこの冬休み中のことをふたつ話してみたいと思います。

 ひとつ目は、ある3年生の冬休みについてです。冬休みの終わりにたまたま登校してきたSさんをつかまえて、この冬休みはどうだったと聞いてみましたら、家の事を色々こなしたら家族によくやってくれるなあと褒められたとのことでした。重ねて頑張った理由を尋ねてみると、就職も決まり、卒業したらもう社会人になるのだから、何事も自分から進んでやるようにしないといけないと考え、家のことも進んでやってみたという自信たっぷりの答えが返ってきました。
 2学期の終業式で、冬休みは普段とはまた違った行動や体験をしてみる良い機会であるということや家族と将来について語り合うことの大切さなどについてお話をしていましたので、彼女の話を聞いて嬉しくなりました。
 しかし、おそらくSさんだけが特別なのではなくて、皆さんもこの冬休みにそれぞれ自ら進んで何らかの行動を起こしてみたのではないでしょうか。3学期の学校生活も、進んで物事に取り組む姿勢を継続し、行動を習慣にまで高められるよう頑張ってみてください。

 ふたつ目は、冬休みの補習についてです。1、2年生とも全員が対象の補習が行われましたが、3年生のセンター試験受験者向け補習も行いました。参加者は15名で、このうち7名が18、19日の両日行われるセンター試験を受験する予定です。受験する7名を含め、15名は全員進学先が決定している生徒ばかりです。それなのになぜ補習なのでしょうか。
 そもそも勉強は何のためにするのかということです。目の前に課題テストがあるから、学年末考査があるからという勉強も大切ですが、そればかりにこだわると、その目標が目の前を通り過ぎると勉強の意欲や目標を見失ってしまうことになりかねません。
 そういう目先のことばかりに縛られずに、自ら進んで自分のために勉強ができたら、そういう勉強はきっと長続きするでしょうし、それは皆さんの人生にとっても大きな財産になるものと思います。
 すでに進学先が決まっている15名の補習参加者も含め、全校の皆さんに、自分から進んで行う勉強ということについて考えて欲しいと思います。
「先生、でもやっぱり勉強する意味がわかりません。」と言う声も聞こえてきそうなので、そういう人にはこの言葉を贈りたいと思います。
「学ぶものは自分が学ぶことの意味を適切に言うことができない。だからこそ学ばなければならないのである。」内田樹という人の「昭和のエートス」という著書の中の言葉です。もう一度言います。学ぶものは自分が学ぶことの意味を適切に言うことができない。だからこそ学ばなければならないのである。
3学期は締めくくりの学期であると同時に、新たな飛躍のための準備の期間でもあります。自分の成長を楽しみに、しっかりした助走ができる3学期にしてください。




 平成25年度 2学期終業式あいさつ    H25 12.20

 長い2学期も終わり、今年も残すところあと10日余りとなりました。先ほどの賞状伝達式で表彰された部や生徒のみなさん、課題テストの成績優秀者のみなさん、おめでとう。みなさんの日々の努力の積み重ねが成果につながったものと嬉しく思います。今後の一層の活躍を期待しています。
 2学期は学校行事も盛りだくさんでした。仲間との協力や経験をとおして、学ぶことの多い、充実した学期だったのではないでしょうか。
 
さて、東日本大震災の募金活動は3年目となり、今年もゴールデンウイーク中に行われましたが、本校3年生のYさんとAさんの体験談が「Sぷれっそ」という小冊子の11・12月号に掲載されていましたので、まずその話から始めます。

 二人は、募金活動中に観光客から「高田高校って何?」と聞かれ「震災で被災した岩手県の陸前高田市にある高田高校を支援するための募金です。」と答えたのですが、返ってきた言葉は「そこまで言わないとわからないわよ。」だったそうです。「昨年も一昨年もこんな反応はなかった。言わないとわからないんだ。」と、人の心が時とともに震災から離れていく、記憶が薄らいでいくことに二人は大きなショックを受けてしまいました。善意で行っている募金活動に対して冷たい一言だなと、私自身も一瞬憤りを感じつつ、でもちょっと待てよと考え直してみました。

 例えば、口先だけで被災者は可哀想だと言うのは簡単なことですが、二人は、実際に募金活動という行動を起こし、その結果として、募金する人の生の声を直接聞くことができ、そして、まだ3年も経過していないのに人の心はこんなにもうつろいやすいのだという現実に気づくことができた訳です。募金活動という行動がなければそんな現実に気づくこともなかったかもしれません。自分の体を使って、行動する、体験するということの意義を改めて感じたところです。ちなみに、「体を使う」「行動する」「動く」ということにより、心も意欲的になったり物事を前向きに捉えられたりするという効用もあるようです。

 3年生にとっては卒業がすぐそこまで来ています。進学や就職の前に今から準備すべきことに取りかかるということもあるでしょう。家族と自分の将来についてもっと語り合うのもいいと思います。卒業後の最大の後悔は、親にとっても子にとっても、「親子でもっと将来について語り合っていればよかった。」との全国のアンケート結果があります。

 1、2年生はどうでしょうか。2学期は2年生全員と1年生の20名を合わせて、96名の生徒と面談ができましたが、その面談から見えてくることの一つとして、来年の統合を見据えて「勉強」への意識が強まっていることが挙げられます。その分成績が伸びないと、余計に落ち込む、あるいは勉強から逃げたくなるかもしれません。そうではなくて、勉強が大事だと思えている自分にまず拍手をおくるべきだと思います。あとは、やはり「行動」することです。普段部活動で忙しい人も、冬休みは態勢を立て直すチャンスです。

 本校創立85周年の記念講演で昭和女子大学学長、坂東眞理子氏が言われた「努力や行動を自分の習慣にしなさい。」という言葉を思い出して、それぞれの「行動」を「習慣」にまで高める、そんな冬休みにしてください。
 大会を控えた部は文字通り日々「行動」している訳ですが、その人たちにとっては、荒木田裕子先輩の言葉も大いに励みになるはずです。「高い夢であればあるほど精神力が大事になる。」確かに、そうしようという意志や精神力がなければ「行動」も「継続」もありません。

 終わりに、この冬休み具体的な一歩を踏み出そうとする全校の皆さんへのエールとして、この12月5日に95歳で亡くなった、南アフリカ共和国の元大統領Nelson Mandela氏の言葉を贈ります。27年間もの獄中生活を強いられた方の言葉が私たちの背中を力強く押してくれます。"It always seems impossible until it's done."(達成するまでそれはいつも不可能にみえる。)そうです。ただ不可能に見えているだけなのです。
 それでは、事故のない充実した冬休みを過ごし、3学期の始業式にはまた元気な笑顔を見せてください。来年もよい年であることを願いあいさつとします。


平成25年度 2学期始業式あいさつ    H25 8.21

 今日から2学期が始まりますが、夏休みはいかがでしたか。1ヶ月の長い夏休みでしたが、休みなどと呼べないほど、忙しい日々を送った人も多かったと思います。
 夏季補習、部活動、各種大会への参加に加え、1年生は「地域との連携強化プロジェクト」の伝承館見学、2年生は進路ガイダンスやインターンシップ、3年生は就職希望者対象のマナー講習や会社訪問、オープンキャンパスなど、学年ごとの行事も盛りだくさんでした。これら学校側から提供された活動が、皆さん一人一人の学習の後押しとなり、充実した2学期を送るための蓄積になったものと思います。

 さて、私からは、夏休みの出来事を2つ選んでお話しします。
 一つ目は高田高校訪問と今回の土砂災害についてです。
 8月5日(月)に、千葉丈先生、福原先生、生徒会執行部、インターアクト部の生徒たちと岩手県立高田高校に行ってきました。義援金の目録をお届けするとともに両校の生徒同士の交流が目的です。当時の高田高校の犠牲者23名全員の写真が校長室に掲げられているのを拝見し、2年半前の大震災の記憶は今も「過去」のものにはなっていないと実感しました。目録の贈呈と交流を終え秋田に戻る途中、高田市街を回ってみました。繁華街であっただろう地区には当時の街並みを偲ばせるコンクリートの土台だけが道路づたいに連なっており、所々には、それがまるで墓前であるかのように花が供えられていました。
 災害の恐ろしさを十分噛みしめたはずでしたが、それからわずか4日後の8月9日(金)仙北市田沢地区の土石流が発生し6名もの尊い命が奪われました。みなさんも大きな衝撃を受けたことと思います。2年半前の大震災もそうでしたが、Disaster strikes when you least expect it.「 天災は忘れた頃にやってくる。」です。仙北市に限らず秋田は自然に恵まれており、今回のような災害も発生しやすいのかもしれません。ニュースにはなりませんでしたが、田沢湖スポーツセンターに続くアスファルトの道路はズタズタで一部通行止めになっていましたし、その近くにある温泉の後ろを流れる小川を濁流とともに、背の高いブナの木が立ったまま流されていったという話をその温泉の従業員の方から伺いました。自分の家の周辺の環境や登下校の道路状況など日頃から注意を払い、万一の時のことを常に考えておくこと、気象情報等、情報収集に敏感であることなどが必要と思います。「自分の命は自分で守る」という震災の教訓は、私たちの日常にも生かしていかなければなりません。8月30日より「特別警報」の運用が開始されます。気象庁が集中豪雨予報等で使用する「ただちに命を守る行動を取ってください。」は決して大げさな表現ではないと肝に銘じたいものです。
 二つ目は角館高校との合同応援についてです。
1学期終業式翌日の7月20日(土)、本校1年生は角館高校1年生と合同補習の予定でしたが、甲子園予選での野球部の快進撃に、角高の全校応援が決まり、本校1年生も応援に加わることになりました。7月23日(火)の決勝戦も合同ですばらしい応援を繰り広げましたが、ご承知のとおり、角館高校は延長15回秋田商業に惜しくも敗れてしまいました。 しかし、大きな声援や歓声をあげ、ひとつになって応援している姿は大変感動的でしたし、統合に向け大きな財産になったと思います。なにより、角館高校がここまで頑張ったことで、「やればできるんだ」という希望や勇気をもらうことができた人も多かったと思います。自分自身が何かをやり遂げたわけではありませんが、誰かが達成した何かから、「自信」や「やる気」をもらうことができるということもとても大事なことだと思います。部活動に限った話ではありません。自分一人というのは、とても小さい存在です。しかし自分の周囲の人たちの良さやすばらしさに気づき、それらを自分の味方にできる人は、小さい自分をどんどん大きく成長させられる人間だと思いますし、そういう人の回りには自然と同じ気持ちの仲間が集まってくれるように思います。
 昨年授業を受け持った角高球児のK君、Y君、T君たちもそういうタイプの人間でしたし、皆さんの中にもそういう人がたくさんいるように思います。2学期は、3年生にとっては進路決定の勝負の時期です。2年生は修学旅行という大きな行事があります。1年生は角館高校生と一緒になってのコース選択があります。また、1、2年生にとっては学校生活や部活動等さまざまな場面で3年生から重責を引き継ぐ時期もやってきます。
 2学期は長丁場で、さまざまな活動が同時並行的に進む目まぐるしい学期ですが、それらに振り回されたり投げやりにならないために、周囲に転がっている小さな努力の種や成功の種をしっかり拾い上げることが必要だと思います。「相手の成功に拍手を送り、自分ができる小さな事柄を大事に積み上げていく。」こういう姿勢で2学期を乗り切ってみたいものです。みなさんも、自分なりのこだわりや方向性をはっきりさせて、2学期の良いスタートを切ってください。健闘を期待します。




1学期終業式 H25.7.19

 4月5日の始業式からもう3ヶ月と2週間が過ぎました。この間、運動会や角南祭、85周年記念講演会、一昨日、昨日と熱戦を繰り広げた球技大会と、大きな行事が色々ありましたし、部活動では、県南総体、全県総体、東北大会、県体、そして吹奏楽部の県南コンクールなど、こちらも3年生が中心となり、部員一丸となって活躍してくれました。さらに、高田高校の支援のための募金活動が5月3日〜5日の連休に行われ、今年も多くの方々からご支援を頂きました。
 明日からの夏休みを前に、ここで少し立ち止まって、慌ただしく過ぎ去った3ヶ月と2週間を各自振り返ってみることは意味のあることだと思います。 私は4月から行ってきた3年生との校長面接を振り返って、見えてきたこと、学んだことをみなさんにお話しようと思います。

 3年生に対する率直な印象は「みんなよく頑張っている」です。勉強のみの話をしているのではありません。たとえば家事をほとんど自分でこなす人も何人もいます。親子関係がしっくりいかなかったことから、自分の態度を意識して変え、好転させたという人もいました。小学校や中学校の頃は気にしやすいタイプだったが、色々なことに耐えてきたせいか、今では少々のことにはへこたれない強い自分がいると言ってくれた人もいました。毎日とても前向きに過ごしているという生徒たちもとても多かったですが、話を聞くと、ほとんどの生徒は、特に進路についての悩みや課題を抱えていました。たとえば経済面の心配だったり、親と意見が合わないとか、今の力で合格できるか不安だとか、それぞれに悩みや課題をもっているようです。
 要するに、方向性はさまざまですが結局みんな頑張っているのです。
 そして、驚いたことに、そういう3年生に角南の良さは、つまり自分たちの良さはと尋ねると、「元気、明るい、活発、協調性」といった言葉が出てきます。それぞれに大変なことをかかえながら、でも「元気で明るく活発」に「頑張っている」「振る舞っている」というのが角南の3年生の典型的な姿と言えそうです。それこそ、「清く賢く強い」女性を目指す「駒草精神」の一端を見る思いです。
 しかし、色々困難や課題を抱えているけれど、「ただ単に現状に我慢しているとか耐えている、あるいは悩んでいるだけ」であれば、事態は変わりませんし、改善しません。事態が悪化してしまったり、手遅れになったりという結果に終わる危険性すらあると思います。
 それでは、どんな「頑張り」が必要なのかということになりますが、ある3年生のこの夏休みの目標を例に挙げてみますので、みなさんの「頑張り」の参考にしてください。彼女の夏休みの目標はとても具体的です。


 保育検定3級合格を目指す。(それが専門なので。)ピアノの練習をする。(保育士になりたいから。)夕食を作る。(両親が共働きなので夏休みぐらいは自分がやってあげたい。)課題テストの勉強をする。(1、2年の時には成績優秀者で賞状をもらったのに、3年になってまだもらっていないから。)


 いかがですか。彼女の「頑張る」ことの中身はまるでバランスの取れた食事のようです。良さの理由は2つあります。

@ 頑張ることに明確な理由(動機)があること。動機がはっきりしていればしているほど、また強ければ強いほど、実行力も強まります。
A 頑張ることの内容に「知識や技能の吸収=頭や身体に覚え込ませる学習」と「そうして覚えたことを今度は実際にうまくできるか使ってみる学習」の両方が含まれている。言い換えると学習のインプットとアウトプットの両者がそろった、バランスの良い学習になっているということです。


「頑張る」とは、ただ現状に甘んじているのではもちろんなく、さまざまな場面を通じ知識や技能を吸収し、さらにそれを使ってみる、試してみることで自分自身を高めていくことだと言えます。彼女の「頑張り」を参考に、みなさんもこの1学期を振り返り、夏休みにどんなことを、なぜ、どのように頑張るか、自分の答えを導き出してみてください。
 充実した夏休みを終え、2学期にまた全員の元気な顔に会えることを楽しみにして終業式のあいさつとします。



1学期始業式  H25.4. 5

 新3年生、新2年生のみなさん、まずは進級おめでとうございます。始業式にあたり、皆さんに期待したいことを3つ述べたいと思います。

 まず一つ目です。皆さんは、この春休みをどのように過ごしたでしょうか。バレー部や吹奏楽部、バスケットボール部、ソフトボール部の練習を少しだけ見ることができましたが、その他の部も新年度の最初の大会に向け練習に余念がなかったことと思います。学校で行われる部活動は多くの人の目に触れ、激励を受けることも少なくないわけですが、一方それぞれの家庭に帰ってからの生活は皆さんから話を聞かない限りなかなか分かりようがありません。しかし、春休みに限らず、この、周囲には見えない自分だけの時間をどのように過ごすのかが実は大変大きな意味を持つものと思います。家庭学習はもちろん、家の手伝いや親子の語らいといった、誰に見せるわけでもない日常を大事にして欲しいということが、私の話したいことの一つ目です。
(人から見えない日常を大事にする)

 二つ目は、具体的な目標をもって、一つ上の自分を目指して欲しいということです。現状に満足せず、挑戦者として、困難だと思える事にでも果敢に挑戦するという姿勢や気持ちを大事にしてください。知らず知らず、現状の心地よさと引き替えに、最も意味のある「今」この瞬間をどんどん先延ばしにしている自分はいないでしょうか。
ルコントデュ・ヌイの「人間の運命」という本の中に「適応しすぎると進化はそこで止まる」という言葉が出てきます。現状に甘えず、一つ上を目指すことの大切さがこの言葉からも読み取れるのではないでしょうか。本校を卒業して何年も経ったある日、ふと自分を振り返って、「今の自分があるのは角南の3年間があったからだ」と胸を張って言える人になれたらと思いますし、そういう高校時代であって欲しいと願います。
(一つ上を目指すことの意味と大事なのは「今この瞬間」ということ)

三つ目は仲間を大切にして欲しいということです。3年生は角南という校名では最後の卒業生となり、2年生は統合校の一期生、今度入ってくる1年生は角館高校と同じ教科書、同じ内容で授業が進むことになります。制服も違います。一見各学年がみなばらばらという印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、みんな同じ角南生です。仲間にも色々あります。友人という仲間、クラスという仲間、学年という仲間、そして角南という仲間、どれか一つだけをつまみ食いするのではなく、それらすべてを大事にして欲しいと思います。相手を大事にするということは自分を大事にするということです。角南に誇りを持つということは自分に誇りをもつということです。互いに仲間として協力し合い、励まし合うことで、角館南高校生としての自覚と誇りを持ち続けて欲しいと願っています。
(仲間を大切にすることは自分を大切にすること)

 以上3つのことをお願いしまして、始業式のあいさつとします。


  H25.4.8

 例年にない大雪に見舞われた冬もようやく終わりを告げ、この角館の地にも北国の遅い春が巡って参りました。厳しい冬の試練に耐え抜き、今一斉に天に向かって芽吹こうとする草木の胎動を感ずる今日の佳き日に、仙北市副市長田邊浩之様、仙北市議会副議長青柳宗五郎様、仙北市教育委員会教育次長兼教育指導課長田口敬一郎様、駒草同窓会会長草g良子様 PTA会長福島正人様はじめ、多くの御来賓の皆様の御臨席を賜り、ここに、平成二十五年度秋田県立角館南高等学校入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであります。
 ただ今、本校への入学を許可されました八十名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
 合格発表の日、自分の受験番号を見つけて歓喜した皆さんは本日の入学式をもって、晴れて角南生の仲間入りを果たしました。あの日の感激と今日の日の感動を決して忘れず、皆さんを支え続けてくれた周囲の方々への感謝の気持ちを胸に、自分の可能性を時に強い意志を持って、時に繊細な心で追い求めてください。
 本校は、昭和三年秋田県立角館高等女学校として設立され、今年、八十五周年という節目の年を迎える伝統校です。この間、数多くの優秀な人材を社会に送り出して参りました。今春の卒業生九十一名も進学七十四名、就職十七名と全員が新たな希望を胸に本校を巣立って行きました。角館高校との統合を控え、女子校として過ごす最後の一年は、皆さんにとって大変貴重で得難い体験のできる一年となるに違いありません。女子教育は今新たな時代の要請により共学化の道を辿っておりますが、皆さんは、本校が女子校として築き上げてきた歴史と伝統を、統合校にしっかりと引き継いでいく大役を担っていると言っても過言ではありません。
 「清く賢く強い人間たれ」という本校の「駒草精神」に掲げる理念は、駒ヶ岳に自生する「こまくさ」の風雪に耐え、なお可憐な花を咲かせるその姿に、教育の拠って立つべき原点を見出そうとするものです。あのわずか数センチの瑠璃色の駒草は、地中深く、80センチ以上にも伸びる根によって支えられているのです。「大切なものは目には見えない。」というサンテグジュペリの「星の王子様」の一節が思い出されます。
 今ほど自意識過剰な時代はないと言われる昨今、思うにそれは、弱い自分、自信のない自分の裏返しのようにも見えます。校是「駒草精神」が皆さんに求める姿はその対極にあるものと思います。「駒草精神」の優しさと強さという一見相反する特性は、木の葉の表と裏のごとく表裏一体の関係とみなすことができます。みなさん自身の経験に照らしてみて下さい。相手に対する思いやりは確かに強く逞しい心から生まれてきます。
 今、東日本大震災から二年が過ぎ、ともすれば人々の心は被災者や被災地から離れてしまいがちです。本校は、昭和四十六年の春高バレー第二回大会に於いて岩手県の高田高校と決勝を戦った御縁があり、震災直後から募金活動を行い、高田高校に対する支援に努めて参りました。
 津波の被害を受けた当時のままの姿を晒すわずか数棟ばかりの鉄筋コンクリートの建築物と工事用の骨組みに囲われて、海際に聳えるあの奇跡の一本松のほか視界を遮るものはほとんど何もない。これが一昨日の陸前高田の現実でした。復興への道のりの険しさを思うとき、私達に出来ることは決して小さくないものと実感したところです。まさに駒草精神や校歌に歌われる「まごころ」を日々の具体的生活の中でどのように生かすか、ひとりひとりの行動力が問われています。
 新入生のみなさん。高校三年間は決して長くはありません。駒草の、地中に深く深くと伸びる根のごとく、周囲からは見えない何気ない日常に「今この瞬間こそ」という自分なりの意味を見いだすとともに、仲間との絆を深め、時に励まし合い、時に競い合って、一つ上の自分を目指して下さい。「適応しすぎると進化はそこで止まる」というルコントデュヌイの言葉にあるように、現状という居心地の良さに甘んじることは、ともすれば後退を意味します。三年後、あるいはその先に、どのような花を咲かせることができるのか、「今の私があるのは」角館南高校に始まる3年間があったからだと胸を張って言える皆さんであって欲しいと切に願います。
 さて、保護者の皆様、お子様の御入学を心からお祝い申し上げます。高校時代は最も多感な時であり、心身ともに大きく発達する時期でもあります。本校の目指す「思いやりの心を育む教育」「生徒一人ひとりを大切にする教育」の達成に向け、保護者の皆様と本校教職員が一体となり、お子様の成長を支え、導いて参りたいと存じます。保護者の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。
 それでは、新入生の皆さんの三年間がたくさんの思い出に彩られる、豊かで充実したものとなりますことを願い式辞といたします。