4月6日の入学式で、角館地区統合高校第1期生となる80名の新入生を迎え、本年度は生徒271名・職員37名でスタートしました。小規模な女子校ではありますが、その分生徒一人一人を大切にした学校づくりをしたいと考えてきました。この1学期4ヶ月弱ではありますが、皆さんや教職員の頑張りで充実した日々を過ごせたことに感謝しています。
さて今日は「命の大切さ」について考えていただきたく、2点お話しします。
第1は、私の好きな詩人吉野弘さんの「I was born」という詩を通して、人間がこの世に生まれた意味を考えて欲しいということです。少し長い散文詩ですが紹介しましょう。(生徒職員にはプリントを事前配布 恥ずかしいが「朗読」する)
(「I was born」はlこちらからご覧になれます。)
いい詩ですね。親にとって子供に「人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね。」と問われることは思いの外辛いことです。その問いに「蜉蝣」の例を通し父親は丁寧にそして誠実に、「この世に生み出されるという生き物の宿命」と「自ら生まれ出ようとする生命の意志」を伝えようとします。人間はこの世に生まれさせられたのか生まれたのか、おそらくその両方なのでしょうが、私は人間はこの世に「生まれた」と考えます。
思えば、月に一度排卵される1個の卵子と3億個もの精子うちの1個との結合によって一つの生命が生まれるわけで、その結合もいつも成立するわけではありません。それ故一つの生命がこの世に誕生する確率は何百億分の一、何千億分の一、おそらくそれ以下の天文学的な数字分の一の確率です。奇跡的なことです。
そこに私は「この世に生まれ出される」という以上に、「自らこの世に生まれ出ようとする生命の意志」を感じます。そして奇跡的にこの世に生まれてきたことを私たちは積極的に受け入れ、どんなことがあってもこの生命を生ききらねばならないと考えます。人生には楽しいことばかりではありません。むしろ辛く苦しく切ないことの方が多いのかもしれませんが、それも多ければ多いほど乗り越えたときの喜びも大きいものです。ともかく、この世に生を受けた以上自分の生を全うすることは人間としての絶対的使命です。
人はこの世に生まれたのか生まれさせられたのか、自分という人間がこの世に生まれ出たことの不思議を思い合わせ、考えてみてください。後でもう一度この詩を味わっていただきたいと思います。
第2は、夏には是非「戦争と平和」について考えて欲しいということです。日本人にとって夏という季節は「戦争と平和」を考える季節であると私は思っています。皆さんのお父さんやお母さん、それより上の私たちも実は戦争を知らない世代です。年々戦争を語り継ぐ人たちが少なくなりますが、夏になるとテレビや多くのマスコミを通して、「戦争」が語られます。ドキュメンタリーやドラマ番組の一つでよいので真剣に見て考えて欲しいと思います。ご存じのように、8月15日は終戦の日で「全国戦没者追悼式」も行われます。甲子園球場でも球児が黙祷し、亡くなった人を悼み平和を願います。戦争や原爆の酷たらしさなど目を背けたくなるような場面も多いのですが、その酷たらしさと戦争の愚かさそして平和の尊さを、唯一の被爆国として私たち日本人は世界に主張していく義務があると私は考えます。
皆さんはやがては「生命を産む女性」です。この夏は是非、戦争と平和について、そして命の大切さについて考えて下さい。
今日は「I was born」という詩を紹介し、「戦争と平和」について考えて欲しいというお話をしました。共に「命の大切さ」に関わる問題です。暑い夏ですが、皆さんには多く「考える夏」であってほしい、と願います。そして夏休み明けには精神的に一回り大きく成長した皆さんと再会したいと思います。
この後の範夫先生の話やHR担任の指導をしっかり守って、楽しく充実した夏休みを過ごしてください。
平成24年7月20日
秋田県立角館南高等学校長 菅原明雅